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クラウンと演劇

クラウンと演劇の関係は…


演劇的な角度からクラウンに関心をもった方のためにちょっと書いてみようと思います。

クラウン劇団OPEN SESAMEのRone&Gigiは、もともと演劇出身です。
もともとは役者としての表現を広げたくて、クラウンの勉強を始め、その魅力にはまってクラウンに転向しました。

日本ではなかなか勉強できないクラウンなので、国内だけではなく海外でも勉強した経験を通して、「演劇とクラウンの関係」が、日本ではいまだに、ほとんど知られていないことを知りました。演劇とクラウンが、はっきり別の分野として分かれているのは、日本の劇場文化の大きな特徴です。身体を使って表現するほとんどの分野の特徴、かもしれません。

「演技力」といわれることもある「表現力」は、俳優、ダンサー、オペラ歌手、クラウン、サーカス・パフォーマーなど、およそ観客の前で何かを演じる職業には、必須の技術です。基本的なその技術とともに、それぞれの専門的な知識や技術があるわけです。Rone&Gigiがクラウンの勉強をした国々では、その基本的な技術は、ジャンルの境なく皆同じようなトレーニングをしていました。そのトレーニングのシステムは、なぜか日本では見たことがありません。

チャップリンは…

日本では、「喜劇俳優」に入るのでしょうか?「コメディアン」?

靴ひも

国際的には、「世界で一番有名なクラウン」といわれています。初期の短編には多くのサーカス・クラウンの作品が組み合わされて使われています。作品を通しての表現手法は、クラウニングと呼ばれる、クラウンの型が基本になっています。

チャップリンだけではありません。初期のサイレント・コメディの俳優のほとんどは、クラウン出身で、その技術を使っています。

映画「僕たちのラストステージ」のローレル&ハーディーもそうです。

シチュエーション・コメディ

クラウンには、その技術だけではなく、物事、社会、状況、人物を見る独特の視線や哲学があります。

日本では、「アイラブ・ルーシー」、「ちびっこギャング」、「奥様は魔女」など古いアメリカのTVドラマがよく知られていると思いますが、これらは典型的なクラウンの構成です。(クレージーキャッツなど、昔のコメディの人たちは、このアメリカのコメディの影響を強く受けていて、それは、コント55号、ドリフターズに受け継がれていきました。)

喜劇と、クラウンは切っても切れない関係にあったわけです。

モスクワ芸術座で知ったこと

スタニフラフスキーの国、旧ソ連では、クラウンの笑いの要素を17つの項目に分け、あたかも薬や調味料のようにそれぞれの調合で笑いを生み出すシステムを構築していました。例えば、チャップリンの映画のすべてのギャグを見て、その組み合わせのパターンを分析するわけです。それを使って、チェーホフの喜劇などが演じられることも多くありました。それはそれは細かいシステムに、そのときは本当に驚きました。「ここはクラウン的なシーンだから」、「この人はあなたにとってのクラウンだから」と、特にチェーホフの芝居のときには演出家はよくいいます。「クラウンがわからないとできない」とさえいわれます。

なぜ海外からの演出家たちが、わざわざクラウンの説明をしないのか?それは、旧ソ連圏でもアメリカでもイギリスでも、「日本人はクラウンを体験として知らない」とは、誰も夢にも思っていないからなのです。彼らが子どものころから体験として、誰もがクラウンを知っていると疑いもしていないのだと、経験を通して知りました。

演技していないように見える演技力

クラウンはたいてい、演技していないように見えます。

チャップリンも、キートンも、ミスタービーンも、キャラクターがとても強いですよね。そういう人が実際にいるように見えます。それは「演技をしていない」のではなく、「何もしていないように見える演技力」を使っているということなのです。逆にいえば、「演技をしているように見えるクラウン」は、まだ未熟なレベルだということです。

クラウンは…

ある演劇大学(日本)で教える機会があったとき、その学校の先生方(当然、演劇関係者ですが)が、「クラウンはジャグリングをするだけのもの」だと思っていたことに驚いたことがあります。

クラウンは、その専門フィールドによって必要な技術が違います。サーカスでやる人、劇場でやる人、映像でやる人、どこででもやる人…etc。サーカスでやるクラウンにはジャグリングは必須ですが、それ以外のフィールドを専門にする人にもジャグリングは実は必須です。笑いを生み出すコメディは、「リズムとタイミング」、日本風に言うと「間」が命です。ジャグリングは、身体的・感覚的なリズム感を養うのに適しているからです。

ただし、クラウンが使う技術は、あくまでも技術であって、それができることがゴールではありません。ゴールは、それを使って笑いを生み出し、感動を創造することです。そのためには、高い演技力が必要なわけです。

クラウンの誤解

クラウンと他の芸術の違いは、「真似をしやすいこと」です。昔は、歌舞伎などでもファンの方が、道楽が高じて歌舞伎装束をあつらえたりやってみたりするような遊びもあったようですが、これは芸事の厳しさを理解した上での遊びでした。

クラウンは、それよりももっと簡単に手軽に真似をすることができます。衣装は東急ハ●ズなどに行けば手に入りますし、メイクも見よう見まねでやってみたりもできなくはありません。コスプレを楽しむには恵まれた条件だといえるでしょう。

一方で、クラウンの文化のない日本では、コスプレとクラウンの違いがわからないのが現状です。メイクをして派手な衣装を着ていればクラウン、あるいはピエロさんだとほとんどの人が誤解します。

この状況を変えていくには、きちんと技術のあるおもしろいクラウンがたくさん世に出ること、それしかありません。

例えば、バイオリンのひどい演奏を聴いても、「もうバイオリンは聞きたくない」と言われないのは、心に響くすぐれた演奏者もいることが知られているからです。

演劇もバレエもオペラも同様です。「今回のはあまり…だったね」と言われるのが積の山です。

でも、文化として定着していないクラウンは、ひどいのに出会うと「もうクラウンはいらない」と言われれてしまうのです。

だから…

「演劇」や「演技をすること」が好きな人に、クラウンを勉強してもらえたらと思うのです。

例えば、メリル・ストリープやキャロル・バーネットなど、コメディのできる女優さんはクラウンの技術をもっているので、クラウンの役もできます。ピーター・セラーズやスティーブン・マーティン、など、特にアメリカ映画の女優・俳優はクラウンのスキルを持っている人がたくさんいます。

最後に…

演劇の勉強の一環としてクラウンを勉強したことがある方の多くが、「クラウンは痛い」という経験をしていると時々耳にします。

実は、かつてRoneもそうでした。日本でよく使われている海外の「クラウンのメソッド」で痛くてつらい思いをして、「クラウンは苦手」と大嫌いになった経験をしています。最後に入ったクラウンの学校で、それとはまったく違うメソッドに出会い、その大きな違いに本当に驚きました。(それがあまりに心地がよかったのでクラウンになってしまったわけです。)

クラウンの学習方法は国によって違い、世界には実にさまざまなシステムがあります。日本人のメンタリティにあったシステムで勉強すれば、「心が壊れる」ような思いをすることはないのではないかなぁ、とクラウンになっていろいろな国に行って思いました。プロのクラウンとして活動しているOPEN
SESAMEのクラウンの学習システムは、かなり違うと思ってください。「クラウンの笑いの効用」をまずあなたが感じながら、学習することができます。

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